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 ▼【新刊読み物】『フローラ』(エミリー・バー作 三辺律子訳)  からくっこ 18/3/29(木) 11:35

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 ■題名 : 【新刊読み物】『フローラ』(エミリー・バー作 三辺律子訳)
 ■名前 : からくっこ
 ■日付 : 18/3/29(木) 11:35
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   『フローラ』
エミリー・バー作 三辺律子訳 小学館(SUPER! YA)
発売日2018/2/14 ISBN:9784092905856
ttps://www.shogakukan.co.jp/books/09290585

 澄んだ空気のような透明感、静けさとそれに包まれた力強さがすばらしいYAです。

 主人公フローラは英国に暮らす17歳の少女。記憶障害のため数時間前のできごとも忘れてしまう。そんな彼女が、単身、北極圏のノルウェー領スヴァールバル諸島へ旅をします。そこで出会う人たち、向かいあうべき真実とは。

 主人公=語り手は、ほんの少し前に体験したことも憶えていられません。これはいわゆる「信頼できない語り手」の例といっていいかもしれませんが、フローラの場合はむしろ、「不安げな語り手」とでも呼んだほうがいいのかも。語り手自身が、記憶を保っておけないために自分の語りを信頼できないわけですから。そのことから生まれる独特の詩情が魅力的で、またミステリ的なおもしろさもあります。

 上記サイトの作品紹介にはラブストーリーと書かれていて、たしかにその要素はありますが、わたしとしては、これは大人になろうとする少女が自分の足で歩き出すさまを描いた、成長と自立の物語だと思いました。

 本書ではまた、北極圏の厳しく美しい自然の情景に圧倒されます。空気が澄みわたり、真夜中に太陽が輝き、雪と氷に覆われた世界。フローラが自分の人生を歩み始めるためには、ひとりでこの土地に旅することが、どうしても必要だったのだと思います。表紙の絵が、それを象徴しています。作中、「ここにくるよう運命づけられている人がいる」「ぼくたちにはこの場所が必要なんだ」といったセリフがありますが、そういう特別な場所を持っている人は、じつは多いかもしれません。

 ぜひ読んでみてください。おすすめ。

からくっこ(WYN-1050)

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