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 ▼【新刊読み物】『ぼくと象のものがたり』  ぐりぐら(WYN-1039) 15/5/7(木) 8:42

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 ■題名 : 【新刊読み物】『ぼくと象のものがたり』
 ■名前 : ぐりぐら(WYN-1039)
 ■日付 : 15/5/7(木) 8:42
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   『ぼくと象のものがたり』リン・ケリー作/若林千鶴訳/
鈴木書店 2015.03 317ページ ISBN 978-4790233060

 インドのとある村に住む少年、ハスティン。貧しいながらも家族仲良く暮らしてい
た彼の生活は、妹が熱病にかかったことで一変する。妹の治療費を稼ごうと、進んで
サーカスの象係りになったハスティンだったが、そこで待ち受けていたのは過酷な児
童労働の場だった。いつしかハスティンは、自分も鎖につながれていることに気付く。
そう、そこで捕らわれていた象のナンディタと同じように……

 ここに描き出されているのは、インドでこの 21 世紀に起きている児童労働の過酷
な現状だ。はじめは1年という雇用期間だったのに、やれベンキの缶を置き忘れただ
の、わらを落としただのと、借金は雪だるま式に増えて行く。希望を持って刻み始め
た壁の日付の印も、いつしか1日の終わりの儀式に過ぎなくなる。だが、主人公ハス
ティンは、そんな過酷な中で身も心もたくましく成長していく。そして、自らも捕獲
に加担せざるを得なかった子象ナンディタと心を通わせていく。ナンディタの行動は、
象とはこんなにも賢く感情豊かな生き物だったのかと驚かせてくれた。
 この作品が秀逸なのは、主人公の少年の心が鮮明に描き出されている点なのは言う
までもないが、加えて、脇を支える人物たちがそれぞれ封印したい過去を持ち、それ
ゆえ言い知れぬ心の葛藤を抱えている点だと思う。料理人のネミンと象の訓練士シャ
ラッドにもぜひ注目しながら読んで欲しい。
 わたしが読了した日は、奇しくも、日本では「子どもの日」が祝われ、子どもたち
の明るい笑顔がニュースを彩っていた。しかし、世界では今日もどこかでつらい労働
に歯を食いしばって耐えている小さな子どもたちがいる。豊かと言われている日本と
て、子どもの貧困は密かに広がっているという。すべての子どもたちが笑顔になれる
ことを祈らずにはいられない。


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すごく久しぶりの読書室レビューです(^^;)

ぐりぐら

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